立花理佐「リサの妖精伝説 -fairy tale-」

 つづけて明菜フォロワー。立花理佐
 「毎度おさわがせします3」の出演を経てレコードデビューという、まあ、つまりは明菜フォロワーであるミポリンのフォロワーという立ち位置な彼女。
 ファミコンのディスクゲーム「中山美穂のときめきハイスクール」(――恐らく恋愛ゲームの初ヒットがこれ)の大ヒットを受けて、立花理佐陣営も「リサの妖精伝説」なるゲームを発売、そのイメージソングとして88年7月に発売された。
 松本・筒美のゴールデンコンビに当時は新進作家の小林武史がアレンジ。
 デビュー曲「疑問」以降前作「刹那主義」までツッパリ路線を続けたがここで方向転換、打ち込み多用のエキゾ・ユーロ歌謡という、はい、明菜の規定路線ですね。


 さてさて、「松本・筒美」とはいえこの時期はそれまでの多作がたたって微妙にテンションが落ちてきたふたり、魅力の感じない素材に対しては結構ぞんざいな作品を与えていたりして、松本・筒美時代の終わり=80年代の終わりという感じでちょっと切なくもなっていた頃なのですが、
 こと立花理佐に関してはふたりのやる気があったのかなかったのか皆目わからないというか、明後日の方向に打球が飛んで見事な怪作になっているというか、前作「刹那主義」の「未来? 波にでも聞きなさい」の唐突っぷりもなかなか凄かったけれども、今回の「サリナバチタ」の連呼もなんだかもう腰砕けというか、ある意味素敵な一品に仕上がっております。
 手癖感満点の詞のようでいて、実はゲーム攻略のヒントが歌詞に隠されている、とか(――アグネス・チャン「ポケットいっぱいの秘密」で松本氏が使った折句手法で、ゲーム最後の攻略手段がたちあらわれるんだとか)、サウンドもやけくそ気味のオケヒットの連発とか、間抜けようでいて、ちゃんと聞くと案外きちんとしてるんだよなあ。
 カップリングの「リサの妖精伝説 -BE POP HIGH SCHOOL-」にしても、立花出演の映画「ビー・バップ・ハイスクール」のテーマでA面の同曲異歌詞バージョンという、これまた遊び心なのだかやっつけなんだか。
 ただひとついえるのは、ふたりはこの曲で真面目にふざけている。これだけは確実にいえるぞ。

 とはいえメディアミックス展開も実らず、ゲームも歌も不発。そもそも当時のちびっ子に立花理佐といわれても「誰それ」ぞなもし。
 メディアミックスってつまりは掛け算の世界だと思うけれども、母数となる「立花理佐」のもっている数がそもそもねぇ……。
 以降、立花理佐はこの年の年末、所属事務所とトラブルを起こし、アイドル廃業。事務所はそのあおりで廃業。撤退早っ。
 というわけでひと言でいえば大失敗だった立花理佐プロジェクトだったんだけれども、
バブル期のゲーノーカイの浮き草ソングとしていまだ細々と語りつがれているのだから、まあ、いいか。