Kaho 「Every Hero」

Every Hero / Strong Alone

Every Hero / Strong Alone

 アルバム出てから判断しよっかなと思ったけれども、これ一枚っきりではや一年、音沙汰ないので今更ながら。河合奈保子の娘、14歳にして宇多田ヒカルのプロデューサーに見出され、月9ドラマ主題歌でデビュー――ってどんだけ鳴り物入りだよっていうデビューシングルだったわけだけれども、売上は御存知の通り空振り気味だったわけで、内容も宇多田ヒカルの亡霊が見えるばかりで、彼女の個性は見えない。
 はっきり言って、声作ってると思うよ、コレ。宇多田チックな物真似スモ―キーボイスはやらされているだけと私は直感したね。なんか嘘くさくって聞き心地が悪いんだよ。喉を無理に締めたような声は聞いてるだけで呼吸困難になりそう。お母さんのイメージをダブらせるわけじゃないけれども、もっとしっかりと喉を開いて歌えば、まっすぐで綺麗な声出せるんじゃないかなぁ。
 自作である詞曲の世界観も、どうよこれ。凡庸で、彼女のリアルが感じられず、背伸びという印象しか残らない。宇多田の「Automatic」の恋人からのメールに思わずパソコンモニター触れたら暖かかった的な、とは言わないまでも、オヤジ的視点で言う「おお、これが最近の若い娘っ子か」的ななんらかの新味がなんか私は欲しかったよ。堅苦しっくいえば、わたしは才ある若い魂に触れた時の清新な驚きをこの作品で得ることはなかったってこと。
 ま、14歳で自作してこれってのでほうって思う人はいるだろうし、そういう人がこの曲のターゲットなのかもしらんけれどもさ、子供なんてすぐおっきくなっちゃうんだからね。安達祐実を辻・加護を見ろっていう。天才子役が天才役者になるとは限らんわけで、低年齢なんて所詮期間限定の危うい武器、芸能界という荒海を渡る櫂とはならんのですよ。
 総体的にこのシングルに関しては大人の思惑で促成デビューさせられたという印象しか受けない。河合奈保子で例えれば、デビューしてイキナリ売野の挑発路線やらされているようなっつうか。もっと身の丈にあったことやりなってば。
 12月に放送した「Kahoのオールナイトニッポン」を聞く限り本人まるで幼く素人の子供そのものだし(――話し声は、素人時代の小学生の河合奈保子に結構似ていた)、年齢的にもガッツリ就学中だろうからゆるゆるとした展開しかできないだろうし、本気で育成するつもりならあのタイミングでデビューさせなくって良かったんじゃないかな。
 正味なところ、五年経ってどうなっているかといったところだけれども、その時にチャンスが与えられるかというと、そこまで待てるのか、今の音楽業界。「芸能界を記念受験してみました」で終わってしまう可能性もあるよね、これ。
 宇多田ヒカル河合奈保子というふたつの十字架を背負わされて、はたしてどうなるKahoちゃん。神田沙也加のごとく、七光りと周囲から舐められつつもしぶとく生き抜いて自分の世界を作りあげられればいいんだろうけどね。