中森明菜「unfixable」

unfixable(初回限定盤)(DVD付)

unfixable(初回限定盤)(DVD付)

 歌詞の面で言えば、これ30年目の「飾りじゃないのよ涙は」だな。ふたりきりの車内での一幕に男女の関係が隠喩されている。明菜は好きな男とのドライブでも、つねにサスペンスフルだ。
 今回はこう。車上のある一組の男女。男が車を運転し、女は助手席にいる。男の運転は荒っぽい、どうやら頭に血が上っているようだ。
 信号を無視してアクセルベタ踏みし続ける男に、女は思わずサイドブレーキを引く。おいおい、これ下手したらクルマがスピンするぞ。もしかしたらスピンしたかもしれない。緊張感ある一瞬。
 我を忘れて「unfixable」になっている男、それを女は冷徹な眼差しで見つめている。女はその時、男の腹の底を見る。将来を確かめ合ったはずの男女のバッドコミュニケーション。このまま「unfixable」で突き進めば、破滅してしまうのかもしれない。 
 しかし女は「わたしはfixable」そう確信している。昔の明菜なら、ヤバめの男に引きずられて心中する筋立てとなるところだが、今の明菜は違う。ここがポイント。生命力があるのだ。
 彼女は男とやり直すのか、あるいは男を捨てて自分だけでやっていくのか、それは明示されていない。ともあれ、そこにあるのが、クールで芯のある、そして何よりも、生き強い女の姿であることに変わりはない。
 もしこの擬似洋楽路線に、安室奈美恵のモノマネ?と思うファンがいたとしたら、明菜をしっかり聞いてなかった証拠だからね、反省しなさい。今回はざっくり言えば「不思議」+「Crosss my palm」+「Diva」。20歳過ぎから今までずっと明菜の音楽でやりたいことのどまんなか本流だからね。