八神純子 「思い出は美しすぎて」

 八神純子の78年のデビューアルバム。
 「パープルタウン」「みずいろの雨」の大ヒット曲から、透明感のあるパワフルなハイトーンで魅せる非常にオフェンシブな歌手、というイメージが強い彼女だけれども、ファーストアルバムは、極めて内省的で感傷的なバラードアルバム。
 いいところのお嬢さんが、雨の日にピアノをざれ弾きしながら、心にわきあがったおセンチな感情を歌ってみました、という感じ。雰囲気としては、ユーミンの「ひこうき雲」に近いかな。「せいたかあわだち草」とか、ほんと胸がきゅんきゅんしますよっ、もうっ。
 誰しも一度は味わい、そして誰しもが失う「思春期の感傷」が、この一枚に封印されている、といっていいんじゃないかな。大人になったら、二度と戻れない場所にある、まさしく「思い出は美しすぎる」そんな1枚。名盤といって差し支えないか、と。
 あ、もちろん八神さんなので、「思い出の部屋より」「もう忘れましょう」など、しんみりバラードでも、サビではカンツォーネ的にボーカルをぴぃんと張っちゃうんだけれども、また、そこが素敵だったりします。