ICONIQ 「Change Myself」

CHANGE MYSELF(DVD付)

CHANGE MYSELF(DVD付)

 ばいばいばいばいなう。って始まったばかりなのにさよならですか。
 スキンヘッドの謎の大型新人――というふれこみだったのにネットで過去がボロボロと発覚して、物凄い勢いで叩かれまくりんぐの、今年の業界の《打ち上げ花火》ICONIQさんのファーストアルバム。
 反日だとか整形だとかゴシップ的な諸々はまぁそれぞれ皆さんで検索していただくとして、実際の音は、悪くはないです。安室ちゃんの最近の諸作で有名なT.kuramichicoコンビを中心にいわゆる《エイベックス》なファクトリーミュージックでつるっと聞けて耳ざわりがいい。
 ただ歌手としての佇まいに、倖田さんや浜崎さんといったエイベックス王道の、いわゆるヤンキー的自意識が希薄で、そこが特徴かと。ギラギラと下世話な欲望を照射するような所がないのね。システマティックに作りこまれたサウンドにふわっとただ乗っかってるだけ。
 歌手としての実存がなさげで、誰が歌ってもいいような匿名性が強くて、つまり華麗で空虚なファッションとしての「音」だけがあるという感じは、むしろビーイングっぽい感じもする。出てきて途端のダーティーな噂や、実働プロモーションの少ないメディア攻勢や、唐突で腰砕けなカバーの「ライカバージン」とかいったところは個人的には倉木麻衣のデビュー時を髣髴したりもして。
 ただ、オープニングで赤ちゃんに「Change」と無理矢理いわせたり、エピローグでは私が変わるとか何とかICONIQさんがぶつぶつつぶやいたりと、オバマ大統領かよとばかりに「Change」押ししてますが、丸刈りにしたくらいで女の人生って変わるものなのでしょうか? わたしにはわかりません。
 化粧品のキャンペーンに起用させたり、女性誌の表紙を飾ったりということで、ターゲットはF1層ど真ん中っぽいけれども、果たして。ターゲットの外側の私はなんとも判断しづらいのですけど、この層にいきなり訴求したエイベックス系アーティストって確かいないと思うので――浜崎も安室もティーン狙いからはじまったわけだし、ちょっと読めない。女性誌でライフスタイルを語ったりしている姿が今の時点ではまったく見えないしね。
 「こけるだろ」と今の時点でいうのは簡単だけれども、本人登場前にこれだけ嫌われると逆に何か彼女にはあるのかも、と思ったりもして。なんやかやいいつつも何者なのか、どうなりたいのか、実体が見えない今は判断が難しいところだけれども、はたしてどうなるのか。個人的には芸能界久しぶりのヒールとして頑張っていただきたいかな、と。