奈知未佐子

80〜90年代を駆けぬけたハードコア少女漫画誌「プチフラワー」(わたしの唯一の定期購読漫画誌でもありました)。
その重量級の作品群のなかにあって常に独自の位置で短編作品を淡々と描いていた「奈知未佐子」さん。
すまんっっ。全然気づかなかった。こんなに良質の作品を描き続けていたなんて、今の今までこれっぽっちも気づかなかった。ごめんよーーー。
はじめて精読した「花渡り」に感動。
これを反省に先生の作品集めさせていただきます。はい。
ひとまず私が持っている「プチフラワー」から読み直さしていただきますです。

童話がよみたいなぁ、と、ずいぶん前から思っていた。
小川未明のような、浜田廣介のような、昔の質の悪い濁ったガラスのような、不確かな透明感のあるそんな童話がよみたいと思っていた。
というところに奈知未佐子の描く物語はとても心地よく心に染みていった。
「天使の釣り鐘」「宝の島の青い船」「雨寺の傘」……。
人の生のおかしさや切なさ、よころびとかなしみ、ひとつの小さな物語にその全てが交じり合っている。うまい。
そしてなりより物語を包む作者の温かな視線がここちよい。

他の少女漫画家で言えば坂田靖子の世界が1番近いかもしれない。
ともあれ、何たる不明―――。これだけできる人を見逃しているとは……。