本田美奈子 「ANGEL VOICE」

ANGEL VOICE(DVD付)

ANGEL VOICE(DVD付)

90年に発売予定だった未発表アルバム1枚にベストを1枚、さらに既発売のDVDを編集したベストDVD1枚という3枚組布陣。ごった煮だなあ。ひとまず未発表アルバムのdisc.2だけの話をするか。といっても、「売れなさそうだからお蔵入り」そんな楽曲が素晴らしいわけがない、そんな現実を叩きつけらたというか。こんな名曲が隠れていたのか、という驚きはまったくなかった。

 そもそもアレンジが絶妙に安っぽいんだよね。元々制作費が安かったのか、90年という時代のせいなのか知らんが、ぺらっとした打ち込みメインで、今聞くにはちとつらい。ワイルド・キャッツでクラッシュしてソロアーティストとしてやり直しの1枚、となるはずだったのだろうけれども、作品から方向性は見えないし、作家陣も今までのラインから一新しているのものの、狙いは見えない(あ、不思議と当時の中森明菜と被っているな。都志見隆佐藤健、関根安里、許瑛子とね)。デビュー以来やたら力みまくった彼女のボーカルがここでは程よく抜けているが、それは成熟というよりも逡巡とうつる。わたし、歌手として、これからどうなるの、みたいな。「これを表現するんだ」みたいなモノが全体から感じられず、まぁ、お蔵で当時の東芝的には正解だな、としかいいようがない。

 レコードアーティストとしてはつくづく不遇な人だったよなぁ、本田美奈子って。
 死後、それまで所属したレコ社五社のうち四社から未発表ニューアルバムがリリースされた彼女だけれども、もういいでしょ。それとも最後にユニバーサルからも出しちゃう ?