安室奈美恵 「Funky Town」

FUNKY TOWN(DVD付)

FUNKY TOWN(DVD付)

 もう、安室先生といいたい。悔しいほどにカッコいいなぁ。

 時代とシンクロしてしまった歌姫が、その時代の移り変わりとともに、その座を誰かに明け渡さなくてはならなくなった時、大きな痛手を彼女たちはこうむることになる。
 明菜は自らの内肘を傷つけなければなかったし、聖子は今までのスタッフを切り捨て金髪に染めスキャンダル・タレントとならなければなかったし、ピンクレディーのふたりは、ガラガラの後楽園球場で雨ざらしのラストライブを敢行し、晒し者にならなければならなかった。宇多田と浜崎のふたりは、いままさしく、その座を明け渡すかどうか、という瀬戸際の真っ只中。女王の座を降りるとともに引退した山口百恵だけは、大きな痛手をこうむることなくサバイブした( ――そのかわりに永遠にゴシップジャーナリズムに追いかけられることになったわけだが )。 それらに比べて、本当に彼女は上手くシフトチェンジしたよなぁ。
 身内の悲劇はあったものの、パブリックイメージを損なう大きなスキャンダルを起こすこともなく、音楽的にも小室哲哉の手を離れた一時退屈になったものの、SUITE CHICプロジェクトを経てすぐに復調。よりいっそうコアな世界を展開するようになって、で、新曲これだモノなぁ。

 今の彼女、トップ獲る必要性がない独自の立ち位置にいるくせして、セールス的に、一時期よりも随分いいところにいるっていうのが、はっきりいってズルい。カラオケ需要の甘いラブバラードでヒット狙う必要もなく、どこまでも辛口でタイト、攻めの姿勢を崩さない。その揺るぎなさが今や彼女の支持の大きな基盤になっているのじゃないかな。トップの座を降りた歌姫のその後として、あまりにも理想的。 このまま安易な芸能臭を大衆臭を感じさせることなく、攻撃的に突っ走って欲しい。六月のアルバム「Play」もとっても楽しみ。