波の立たない夕凪の入り江に
小船が一艘辿りつく
誰も気づかなくってかまわない
わたしだけが静かに微笑む

夏はこころが透明になる
遠ざかる一日は
ゆりかごのリズムで
ふたたびわたしのもとに訪れる

それは図書館の隅に眠る
古ぼけた一冊を手にとる時のように
懐かしいときめきを与えてくれるのだ