斉藤由貴 「Vintage BEST」

[rakuten:book:12904217:detail]
 にわかに歌手活動を再開した斉藤由貴の新作ベスト。
 意外な収穫。これ、いいわ。
 前年末リリースされた「悲しみよこんにちは 21世紀バージョン」をさらに発展させたベスト盤であり、セルフカバーであり、ニューアルバムという感じ。
 91年末にWOWOWで放送された擬似ライブ「聖夜」の音源(サウンドプロデュースは斉藤ネコ)、昨年のセルフカバーの音源(サウンドプロデュースは澤近泰輔)、さらに20年以上前のオリジナル音源(サウンドプロデュースは武部聡志上杉洋史)、それら様々な出自の音源を絶妙にミクスチャーして、さらに、そこにアルバム用の新しいサウンドを加味させて、再編曲、再編集して、ひとつのアルバムにしあげた、というかなりトリッキーなアルバムなんだけれども、まぎれもなく「斉藤由貴」のアルバムであり「今」のアルバムであるのが、嬉しい。

 カバーとかリアレンジって、元のイメージをこわして残念な作りになりやすいんだけれども、きちんと以前の良さを残している。
 それでいて今の時代に合わせてリファインさせていて、音がまったく古びていない。20年以上前の音を使用しているとはとても思えないのだ。
 聞いて、オリジナルのほうが良かったと落胆するようなこともないし、オリジナルが途端に色褪せるということもない。
 制作スタッフに、彼女の作品に対する深い愛情と理解を感じずにはいられない。――というのも当たり前の話で、このアルバムプロデュースは、斉藤由貴のデビュー以来の音楽プロデュースの全権を担っていた長岡和弘、リアレンジは斉藤の歌手活動後期のアレンジャーであった(中森明菜ファンにはおなじみ)上杉洋史が担当しているのだ。
 斉藤由貴って、つくづく理解者に恵まれているよなぁ。