夢の中で何度も逢う人がいる。夢の中で暮らす街がある。夢の中にわが家がある。
 現実世界ではまったく知らない、かかわりのない、あるいはもしかしたらどこかで見かけ、表層の意識では忘れた景色や人物なのだろうか、わたしは、何度もその景色を見、その人たちに会う。
 あるいは、広い原っぱの中にぽつねんと立つ、茶色の、古びたアパートメント。あるいは、人の住み着かなくなった、緑の生い茂った、山がちの廃村。雨が降り、日が照る。明かりがつき、明かりが消える。何かの気配がよぎる。歩く。歩く。止まる。ふりかえる。座る。誰かが話し掛け、わたしは応える。
 特にどうというでもない、わたしが好意を抱いているのかも、そうでもないのかも曖昧とした、それら。
 もうひとつのわたしの日常として、夢の中にそれはある。起きた後に、ああ、見たなぁ、と思う、それだけなのだけれども、それらは、私のなかに棲みついている。
 それらはいつもうら寂しく、奇妙な薄ら寒さと相反する慕わしさをわたしはいつも覚える。なんだか恐くて、だけれども、悪い気はしないのだ。
 私はそこから来たのだろうか、それともそこに帰るのだろうか。