文オタ

「どんな人がタイプですか?」
 よくよく自分の内面を照らしあわせてみるに、性格とか容姿とか、あんまり考慮に入らない。どうもわたしは文章が素敵な人が好きらしいのだ。
 理路整然としているとか、色んな知識を蓄えているとか、率直であるとか、ユニークであるとか、情念が強いとか、テクニックがあるとか、そういう諸々全てひっくるめて、素敵な文章を書く人。それだけで、男女の別なく、どんな人だろう、お近づきになりたいなぁと思ってしまう。
 書かれている内容に同感するというのもそうだけれども、そうでなくぜんっぜん自分の価値観とあわなくっても、それが気にならないくらいに上手いと、いいなあ、凄いなあ、綺麗な文だなぁ、素敵だなぁと、憧れてしまう。
 もちろんその逆で、退屈でありきたりで糞つまらん文章を書いている人に対しては、別にそんなもので人間の優劣が決まるわけではないとわかっていても、どこか適当にあしらってしまう。よくこんなセンスの文を書いていられるものだ、と思ってしまう。
 顔オタならぬ文オタ。これはもう仕方ない。業なのだ。たとえ中森明菜が「まこりんさんとお友達になりたい」と言ったとしても、彼女の言葉がビビットに私の感性に響かなければ、無理なのである。心底は敬愛できないのである。
 って、ここで勘違いして欲しくないのは「あてくしは鴎外や芥川レベルの文章でないと満足できないですの」みたいな、傲慢な権威主義とは違うのよ、ということなのだ。
 もちろん鴎外も芥川も素敵だけれども、そうでなくって、まだ右も左もわからない子供の言葉がストレートに心に刺さる時ってあるでしょ、そういう風に、自分の今のありようにみあった素敵な文ってのは、本当は誰でも書ける可能性は秘めてると思うのだ。
 とはいえ、それがいつでもできる人ってのは、やっぱりなかなかいないわけで、しかもそれは、スポーツのようにこの練習を続ければ必ず上達するというものはないわけで、だからそれができる人を凄いなあ、と私は憧れてしまうのだ。