読み返して

 初回の発送が終わって、改めて「第二巻 彷徨の二十年」をじっくり読み直しているんですけど、ひとまずなんとかここまでたどり着けてよかったっ。五月、製本された第一巻の「歌謡曲 最後の時代」を読み直した時に「できるだけ続きを早く出そう、八月のオリジナルアルバム発売直後に完成させる予定で」とひそかに心に期したのですが、それも守れたし。
 なんでそんなに急いでと思う人もいるかもしれないですけど、読み手として第一巻を読んだ時に、誤解されるかも、という危惧を感じたのですね。どういう誤解ってーと、それは「中森明菜は89年で終わった」ってのと「《昔は良かった》の懐古主義」。
 八〇年代の音楽は素晴らしいし、あの時の中森明菜も素晴らしかったけれども、自分の青春時代を絶対の価値とするおっさんくさい定型に物事をはめるためにあの本を作ったつもりはさらさらなくって、そういう生温い「リメンバー・エイティーズ」の風潮っていうのはむしろ私は否定的に感じていて、つまり「その後」を早く書かなくっちゃと、思ったのですね、その時。中森明菜の、そしてわたしたちの生きている「今」まで早くキャッチアップしなくちゃ、と。
 もちろん「その後の中森明菜」は世間的にさしたる需要がないことは十二分に承知で、前作ほど部数は捌けないだろうこともわかったのだけれども(――本当に予約段階でその通りになっているのがちょっと口惜しい(苦笑)。もちろん自分の力不足というのも大きいんだろうけれどもね)、そんなこんなのヘンテコな義理というか使命感というか思いこみというか、そういうので駆け抜けて――、うん、でも、ひとつの成果として、良かったかな、と、読み返しながら思う次第。やっぱりきちんと形に残る書籍にしたほうがいいよね。ハイリスク・ローリターンで全然割に合わないことだけれども、やってよかった。うんうん。
 版下を作る作業をはじめ製本に関する知識やらも多少知るようになったし、ウェブサイトで文章を書くのとはまた違う楽しみやら苦労やら責任やらも味わったし、色々といい経験したかな――って、まだダンボール四箱分も在庫があるのに、終わったことにするなっつーの!
 ……行商せんとな。