浅川マキベスト盤・一案

 逝去以来、ずっと浅川マキの歌を聞いているのだけれども、改めて思う。代表曲が聞けるCDの容量80分ぎりぎりいっぱい(18〜20曲)に収録した2500円ほどの一枚モノの70年代のベスト盤は絶対あったほうがいいっっ!!
 時代をともに生きて、彼女を知っていはいるけれども深くは聞くことのなかったライトなファンが、懐かしいなって気軽に手に取ることのできる感じのベスト。
 アンダーグラウンドの女王と自負しアナログレコード作品のCD化にすら難色を示しつづけていた浅川マキに「ライトユーザー」とか「気軽」とか「ベスト」とか、ま、本人の目の前で言ったならまず鼻で笑われること必至だとは百も承知だけれども、ある時代の象徴として生きた彼女にはそういうアイテムが必要なのだと改めて感じる。
 もちろんオリジナルアルバムの復刻もして欲しいけれども、まず手がかりとして容易に彼女の音楽に触れる作品があったほうがもっといい。まずわかりやすい70年代ベスト、それが受けたならちょっとディープな80〜90年代ベスト、そしてオリジナル作品の復刻。こうならないかなあ。
 既存の「DARKNESS」四部作はマキの自選集なので全体的に作りがわかりにくいし(――後づけ後づけでリリースされたので収録曲もあとになるほど散漫になってたりするし)、2枚組5000円で25曲前後収録というフォーマットもライトな層にはハードルがちょっと高すぎるんだよな。
 例えばこんな感じで……

《MAKI Eternal "DARKNESS" Best 1970〜1979》

1.夜が明けたら
2.ちっちゃな頃から
3.ふしあわせという名の猫
4.赤い橋
5.かもめ
6.裏窓
7.暗い日曜日
8.少年
9.港の彼岸花
10.朝日のあたる家
11.こんな風に過ぎていくのなら
12.あの娘がくれたブルース
13.セントジェームス病院
14.あの男が死んだら
15.ハスリンダン
16.それはスポットライトでない
17.If I'm on the late side
18.オールドレインコート
19.ガソリンアレイ
20.ケンタウロスの子守唄

 「別れ」がない「難破ブルース」がない「あんな女ははじめてのブルース」がない、と色々あると思うけれども、例えばの一案として。
 動いて欲しいなあ、EMIミュージック。それが故人の意思だといわれたらそうなのかもしれないけれども、このままマキの世界が時代の闇の中に置き去りにされるのは、ファンとしてちょっと口惜しい。