安全地帯 「蒼いバラ」

 長らくの休止からようやく再始動した玉置浩二率いる安全地帯の新曲「蒼いバラ」(3/3発売)が滅法良い。
 どういいのか。「ワインレッドの心」や「恋の予感」の頃の、「あの」安全地帯的でいいのだ。退廃的で妖しくエロい、吐息まじりで女殺しの玉置浩二なのだ。
 まさかと思われる御仁はYoutubeで確認されたし。発売元のユニバーサルがプレビューをオフィシャルで流している。

http://www.youtube.com/watch?v=R7xtuJ40yW8&feature=related

 ここ数年の活動休止期間に、石原真理子の暴露本からまさかよもやの彼女との結婚、そして離婚という一連の騒動があった。
 90年代の積極的なドラマ出演や、音楽においては「田園」などの須藤晃との共同作業で築きあげた和製ブルース・スプリングスティーン路線――純朴でやさしくいい人な玉置浩二は虚像であった。もっとろくでなしでどうしようもない奴だと彼は図らずもストリップされたわけだが、そこではたと自らのを悟ったのか。
 あるいは石原真理子との短い結婚生活で若返りを果たしたのか(――P.Vでは20年近く白髪交じりだった頭髪を黒く染めている。確かに石原との結婚時のインタビューでお互いの若い頃を今取り戻しているうんぬんということを彼は語っていた)。
 往年のエロティックにしたたった世界を示しながら、しかしより一層の気迫がここにある。男女が血みどろになってもつれ合っている様が旋律の向こうから幻となって見えてくるようだ。
 蒼いバラ――どれだけ手をさしのべても決して手に入らない、しかし求めつづけずにはいられない幻、それが玉置浩二にとっての恋愛なのだろう。だからきっと相手をどれだけかえても、彼は答えをえることがない。
 女にしがみついて生きるしか術のないジゴロまがいの弱い男の、しかし、曲を作らせ、歌わせると超絶的な男の、自らをストリップした情念の一曲と言っていい。彼となら一緒に墜落してもいい。女ならきっとそう思えるはずだ。石原との呆れるしかなかった一連の騒動もこの一曲で赦される。これだから芸能ってのは面白いよな。
 ともあれ、50歳過ぎた男がここまで情念に満ちたエロい歌を作るというのは、もう業としかいいようがない。これからも彼は泥沼の酷い恋愛をして、というか女を食い物にしてエロい歌を作ってほしいし、もうそれしか彼には道はないのだろう、きっと。