佐藤史生 「チェンジリング」

チェンジリング」89.08.20/小学館

●「チェンジリング」……革命によってロボットが人類を駆逐した惑星の物語。親殺しのメタファーとも読める。長髪で草食系の美形セフィロートは佐藤漫画でお約束の萌えキャラ。《男性器のない男性》というのが好きすぎるな、佐藤さんは。
●「ネペンティス」……そして宇宙空間に飛び出してセフィとリンは――という「チェンジリング」の続きだけれども、話の連続性は皆無。こちらは佐藤さんお得意の民俗学SF。科学がどれだけ駆逐してもヒトは宗教的儀礼を生み出していく、という話。みつ編みになってより萌え度がアップしたセフィさんしか私は見てませんでしたがねっ。
●「塵の天使」……オイディプスコンプレックスのようなそうでないような。冒頭のホモ描写がオチに繋がる伏線になってた。主人の愛に共鳴して姿を変える「土の天使(アズ・ツラー)」は「海のアリア」のベルモリンを思い出した。でも愛する奥さんが「自分」になったら、嫌過ぎる。
●「オフィーリア探し」……レズビアンバーで起こった連続殺人――そこにはジェンダーに揺れる悲しい《男》達の姿があった――という現代モノ。レズビアン?の内面描写が結構生々しい。佐藤漫画はジェンダーの狭間でつねに揺らいでいる。
●「タイマー」……四頁の小話。眠い時って現実が曖昧になって、逆に変な妄想がボロボロ浮かんだりするよね。

表紙に「スペースオペラ」と銘打っているだけあって、いつもの佐藤SFよりわかりやすく、物語の楽しさがあって、読みやすい一冊かと。