銀色夏生 「テレビの中で光るもの」

テレビの中で光るもの+ (幻冬舎文庫)

テレビの中で光るもの+ (幻冬舎文庫)

 あの銀色夏生が、テレビ評。エリカ様やら「水曜どうでしょう」やら徹子やらを語る、銀色夏生。時代の移り変わりというものにちょっと呆然となってしまった。
 いわゆる森茉莉ナンシー関などなど連綿と続く「暇そうなおばさんが退屈なテレビを見ながらなんかしらぐだぐだ語る」というシロモノだが、銀色のそれは、お茉莉ほど自足している感もなければ、ナンシーほど世間様に毒づいてもない。
 なんかこう、茫洋として不定形な感じ。時折はっとするようなひと言があったりするのだが、それは次の瞬間には霧散してしまう。雲の形が移り変わるのをぼうっと眺めるような、あわあわとしたテレビ評といっていいかと。
 文才のある、テレビがとりわけ好きなわけでもないおばさんが、特にやることもないし、ひとまずつけてみて思ったことを、意味はないけれども書き残してみましたよ、みたいな。
 どう思われようとかどう見せようとかどういう層に訴求しようとか、そういうものがまったく感じられず、とはいえ書き手の情熱も感じられない、という奇妙な一冊。なんだこれは。どこへ向かおうとしているんだ。