佐藤明子 「沢田研二という生き方」
- 作者: 佐藤明子
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 2008/01/01
- メディア: 単行本
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話が全然整理できてないので、ループして同じ話を繰り返すし、牽強付会にジュリーと関係のない話に行って戻ってこないし、時系列関係なしに古い話と最近の話がぐちゃぐちゃになるし、説明不足のままあっちこっちに話をすすめるし、作者の心底どうでもいい自分語りはダダ漏れしてるし、なにをいわんとしているのか、まったく伝わってこない。でも、ジュリー好きではあるんだろうな、というのはわかる、という。だからおばちゃんのおしゃべり。
データらしいデータの提示もまったくなく(そもそも地の文自体、いつ・どこで・だれがといった5W1Hの基本ができてない)、およそ批評たるべき客観性というのはない。これでは「沢田研二の生き方」も感じ取れない。せめて年表を作って時代順に語るとか整理して語ればいいものを。
また鉄壁のジュリーマニアかというとそうでもないようで、「勝手にしやがれ」「ダーリング」などの全盛期にファンになって、85年の独立から89年の田中裕子との再婚前後に興味を無くし、ここ最近動画サイトやらファンサイトなどで再燃した――という感じっぽく、長年追い続けていたジュリーマニアだからこそ見える部分、分かる部分、というのもあまり感じられない。つか90年代のジュリーのスルーされっぷりが半端なくって、泣ける。この時代もいい曲いっぱい歌ってるし、いい仕事もいっぱいしてるのに(哀)。世間の話題にはならなかったけどさ。
そして何より一番不満なのが「歌手・沢田研二」なのに歌に関する部分が全篇に渡ってあまりにも薄いところ。ジュリーがどういう状況下で、どういう歌を歌って、それがどのように時代に影響を与え、後世に引き継がれ、といった部分は、ほとんどといってない。あの頃のジュリーはあんなだった、こんなこと言ったという、ビジュアルやら発言やら横のつながりやらおよそ枝葉末節ばかりが語られていて、まー、だから、スターとして輝いていた「沢田研二」という存在が好きであって、歌そのものはわりとどうでもいい感じ。そんなゆるめの顔オタのおばちゃんのおしゃべり、と思えば心安らかに思えるのだが、ちゃんとした読み物としてとらえるとイライラすることしきり。
人間・沢田研二を語るのはいいかもだけれども、彼は歌手で、歌にこそ天命があるんだから、そこをおろそかにしてどうするよ。もうっ。これで納得するほどジュリーマニアは馬鹿でもなければ、お人よしでもないですのことよっ。ぷんすかっ。