日の出ハイム 「日本橋心中」

日本橋心中 (ミリオンコミックス  Hertz Series 88)

日本橋心中 (ミリオンコミックス Hertz Series 88)

 やったね。ついに傑作誕生。時代物BLの最高峰のひとつといってもいいんじゃなかろうか。
 怪異、仇討、心中、兄弟仁義武家の主従、歌舞伎の色子、坊主と寺小姓……。江戸時代の読み物で、あるある、っていうテーマを今回は扱っているのだけれども、ひとつひとつがきちんと素材の良さ・持ち味をキープしつつ、ちゃんとBL読者でも読みやすいものにと見事にアレンジしている。きちんと当時の文物にしっかりと触れ、江戸・元禄の空気感を保ちながら、きちんとBLとして成立している、ってコレ、BLと歴史、両方に愛がある人であってもなかなか難しいんじゃないかしらん。
 多忙なのか、初期と比べると絵が雑になっているところが気になるけれども、それを抜かせば実に堂々とした一冊。まちがいなくこれが彼女の代表作。
 「一輪簪恋錦絵」の、これから仇討に向かうおうという侍に「なにかお力になれることは」と言いつのりながら、しかし所詮おのれは色子に過ぎぬ身の上であることが身に染みてわかり、思わず涙を零す京弥ちゃんとかっ、「桔梗屋敷大振袖決闘」の、好きすぎて好きすぎて、思わず想い人に決闘を申し込む、真面目すぎてちょっと面白い実直武家ッ子の初次郎ちゃんとかっっ、もう、ずっごくかばいいいのぉぉぉぉ。……と、まぁ、わたし萌え的には、場外ホームラン級でしたね、ええ。 不器用ッ子に圧倒的な魅力がある日の出漫画だけども、やっぱその不器用っぽさが最も光るのが時代物ですよねー。
 時代・歴史やおい好きっ子はマスト。読むべし