天童よしみ『歌姫刑事』

裏が「ハリーポッター」で匙を投げたのか、フジテレビで天童よしみ主演『歌姫刑事』なるしょうもない2時間ドラマをながしていた。
いわゆる「天童よしみによる、天童よしみのための天童よしみプロモーションドラマ」、こんなものを見るのは、せいぜい私のようなひねくれモノくらいだろう。
芝居はひたすら新曲「美しい昔」大プッシュ。もちろん天童の演技は新宿コマ座長公演クラス、ツッコミをいれるのも面倒くさくなってくる。
しかし彼女の演技はともかく、途中で入る歌すらも微妙なのがとってもイタイ感じ。アイドルドラマの延長か、これは。
特に、相手役で雲隠れした伝説の歌手として吉田日出子が出てくるのだが、これがもう、一人で勝手に上手いので、その落差がまた……。
彼女だけがこの白けた芝居の中で演劇空間を無駄に作っていて、かつ、最後には「美しい昔」を歌うのだが、これまた天童よしみを軽く凌駕してしまっている。まるでファド・デ・リスボンだ。
ま、吉田日出子が歌手としてもバカテクの持ち主だってことは、「上海バンスキング」を見たり聞いたりした者なら誰でもわかることなのだが、そんな吉田の「美しい昔」と比べてみると、天童の「美しい昔」のなんと平板なこと。


結局天童よしみって「全日本歌謡選手権」でチャンピオンを取ってデビューした「天才少女演歌歌手時代」をきちんと消化しきってないんじゃないかなぁ。
それは大人に囃されていい気なって大人の歌を歌っているなんもわかっちゃいないがテクニックだけは無駄に上手い子供がそのまま大人になったような感じで、ちょっとつらい。
結局彼女は演歌歌手ではなく「ものまね演歌歌手」なのでは、と私は思う。つまり歌手としては松居直美と同じタイプだ。
とみると、彼女の無駄に派手なステージ衣装も大人に綺麗なおべべ着せられて喜んでいる子供と見えてくるから不思議だ。それに腰回りを意識的に隠す彼女の衣装はどこかスモックのようでもあるしね。