もすこし、「左側通行・右側通行」の話を……。

車は左側通行、人は右側通行というのが現行の交通法規だが、「人の右側通行」というのは存外、守られているように見えない。
駅のコンコースや商店街などの歩行者優先/専用の道路、また広々ととられた歩道などは自然と左側通行になっているし、エスカレーター・動く歩道などは大抵きちんと進行方向左側設置されていたりと、それ則った整備がなされている。

そもそも「人の右側通行」というのは戦後直後の昭和25年にGHQの命により制定されたものらしい。それ以前は永らく車も人も左側通行であったところ、自動車の交通量が増えだし、また車道と歩道の分離が曖昧であった当時の道路事情を鑑みて、車と人を対面通行にして安全性をたかめるべく「人は右側通行」と定めたのだそうだ。
しかしこの時、公共施設―――主に鉄道の駅のホームやコンコースなど、を左側通行から右側通行に変更する費用を考慮し、こういった公共施設など人のみ通行する場所での人の通行は左側のままと据え置かれたのだそうだ。
ということで、「人の左側通行」という慣習は生き残り、むしろ道路が整備され、交通量の多い道路での車道と歩道の分離がしっかりと確立されつつある現在では歴史の浅い「人の右側通行」の規則の方が死に体となっているという状況となっている。
(――――とはいえ、車道と歩道の分離がなされていない道路などでの人の通行は安全上、右側であることにはわかりがない。)

ちなみに「右側・左側」諸外国との違いであるが、日英が左側通行なのは武士道・騎士道の影響、それ以外の国が右側通行なのは、ナポレオンと大型馬車の影響というのがもっとも流布されている説であるらしい。
ただ、それがどれほど確証の高い説なのか、私はわからない。