杉本苑子 「今昔物語ふぁんたじあ」正・続

そういえば子供の頃、一番最初に読んだ古典が「今昔物語集」だったなあ、ということを、思い出した。
個人的な印象から言うと、いっちゃん有名な今昔物語集の本朝・世俗説話の部分ってかなり、レディースコミック的だと思うんですよ(ってまたまた研究者が聞いたら噴飯モノの発言をしてしまう)、だから女性作家による今昔の再構築って作業はこれはどんぴしゃかな、と思いまして手にとってみましたが、やっぱりそうでした。
芥川センセを中心に色々と近代小説での今昔翻案モノはありますが、これもトップクラスのひとつなんじゃないかなぁ。
杉本センセは吉川英治師匠譲りの硬質で冷徹な筆致を持ちながら、いかにも女性作家らしい情念のどろどろっとした部分も持ち合わせているわけで、それがまさしく今昔物語のテイストにぴったりフィットしたっつうか、そんな感じでしたよ。
残酷だったり切なかったり、ほのぼのだったり、軽く笑わせてくれたり。人に対する描写力が確かなので、すうっと心に入っていって、楽しめました。
大人のエンターテイメント小説。