最近買ったCDの小レビューをば。


  ・「ルージュ」〜コスメティック・CFソングコレクション〜

ぬはははは。笑った。
ポップスってのは本質的に音楽のジャンクフードだと思う。人工甘味料・着色料・保存料たっぷりで体に悪いと百も承知だけれども耳に心地よくやめられない刺激的な音の食べ物。でもって大型タイアップのCF・テーマソングというのはそのなかの粋、もっとも過激な部分だとわたしは思う。「売らんかな精神」のみだけで成立しているひたすら華麗で派手でそしてなにも得るものがない、ビタミンミネラルなしの無意味で栄養のない歌。それがタイアップソングだと思う。
70〜80年代の化粧品のタイアップソングってのはまさしく無意味歌謡の頂上合戦の様相で、季節ごとのカネボウ資生堂の対決(―――そこに時折ポーラとコーセーが絡む。このラインのタイアップソングは一線オチで大ヒットは少ない)はそれ相応の結果をポップスフィールドにもたらしはしたのだろうけれども(―――特にニューミュージック勢はここを足がかりにしてメジャーにあがった者が多い)、こうやって並べて聞くと無駄な勢いと過激さ、やる気のオーラに思わずゲップが出る。
うまい棒」を箱買いして一気食いしたような胸焼け感でいっぱい。まとめて聞くものじゃないよなあ。これは。
しかし、改めてみても化粧品キャンペーンソングの歌詞やタイトルは物凄いものが多いな。広告代理店の指し示す高いハードルになんとか応えようと努力する作詞家陣には頭が下がる。今見ると「○○センセ、とち狂ったか」と思わせるものばかり。


  ・観月ありさ「FLORE」

90年代前半のアイドル氷河期にひとり気を吐いた観月ありさのベスト、91〜93年の作品を収録。
3Mのなかでもっとも歌手活動に成功した彼女であるが、歌手としての存在感は希薄で、歌声も可もなく不可もなくというところ。下手ではないが、魅力的なボーカルというにはなにかが足りないという感じ。超豪華作家陣の作品がずらりと並ぶが、どれもこれも絶妙なお仕事感で彼女はこなしている。
小室世代の私としては「TOO SHY SHY BOY」「SHAKE YOUR BODY FOR ME」を推したい。小室時代の前夜がここにある。


  ・観月ありさ「FLORE 2」

前作の続編ベスト。94〜97年の作品が並ぶ。
ライジング黄金期・小室黄金期の到来。前作を凌ぐほどの豪華作家陣による充実のラインナップだが、歌手としての成長は前作のベストと比べてあまり感じない。下手ではないのだが、情感不足で棒のような歌い方もここまで突き詰めればひとつの芸風なのかもしれない。常に歌に対してほどほどの距離を置いて決してのめりこまない様はある意味特異だ。歌が嫌いというわけでもないが、とりわけ好きでもない、このお仕事感。
それにしても「DON'T BE SHY」は絶対ヒットすると思ったんだけれどもなぁ。このアルバムをもって後輩のライジング歌手が待つエイベックスへ移籍。


  ・田原俊彦「DYNAMITE SURVIVAL」

ジャニーズの王子様改め、ガウス・エンターテインメントの王子様(……)田原俊彦のジャニーズ独立後のシングルを集めたベスト。
なんつーのかな、トシちゃんの中ではまだバブルは終わっていないっぽい。トシちゃんの心の時計は「教師びんびん物語」と「抱きしめてTONIGHT」で止まっているっつーか。
タイトル曲「ダイナマイト・サバイバル」や「DO-YO」「キミニオチテイク」「EASY…LOVE ME」など、あぁいかにもトシちゃんだなあ、という感じなんだけれども、それが全部なんだか絶妙に古い。音はそれなりに今の作りなんだけれども、歌うトシちゃんがの有り様がもう、なんだか古い。あれ?今って21世紀だよね、と思わずトシちゃんに確認したくなる。
トシは王子様稼業を辞めるわけにはいかないのかなぁ。
王子様をそれでもやりたいっつうなら、ここは郷ひろみのように「笑い」に転化しないとヤバイでしょうよ。ってそれができるほどトシちゃんは変人じゃないもんなぁ……。


  ・松田聖子「ETERNAL」

91年発売の洋楽のカバーアルバム。松田聖子は結婚から独立・海外デビューまでのこの頃が1番歌声がのっていると思う。
しゃくりあげて媚びるような歌い方をやめてまっすぐ声を出しているし(海外デビューで矯正されたのだろうか)、高音とか艶々してホント色っぽい。
時期からいってWINKユーロビートカバーのよるヒットに触発されて企画したようなアルバムだと思うけれども、歌手としての魅力を愉しむにはちょうどいい作品なんじゃないかな。エロティックで煽情的なジャケット写真は方向感覚を失いかけた当時の彼女を象徴しているように見える。


  ・郷ひろみ「く・せ・に・な・る」

郷ひろみは日本屈指のコメディアンだと思う。ひとまず歌詞カードで5分は笑った。早く日本に帰って来てくださいな。