「STAY ラブリー 少年 1」 西炯子


「お手々つないで」の続き。佐藤敦士と山王みちるのお二人さんの鹿児島でのあれやこれや。
前作の「双子座の女」も悪くはなかったけれども、結局アレってホモとおコゲさんの話といったらそれまでという感じで(―――「刈川って何者」という部分が説明できていたら名作になっていたと思う)、個人的にはちょっと微妙だったけれども、比べてやっぱこっちは面白い。

今の西炯子が怖いのは、佐藤敦士のようなどう見てもカッコ悪くてケッタイで童貞臭い、しかしリアリティーだけはてんこもりの「思春期の少年」そのものが描けちゃうことだと思う。少女漫画には「作者にとっての理想的男性像」てのが必ずどっかに出てきてしまうものがほとんどだけれども、彼女の作品にはあんまりそれを感じないんだよなぁ。

石に齧りついても受験勉強、でもその合間にちょっとオナニー、って結局一晩で何回もイタしてそっちメインになっちゃったり、エロ小説図書館で借りて勝手に恥ずかしがったり、今回登場のみちるの幼馴染、上温湯渚の知らないみちるの話を聞いて勝手に優越感感じたり、ああ、男って馬鹿だなぁ、と思うことしきり。

こうした視線はもちろん女性側にも注がれていて、大して親しくない子と『流行っていたから』という理由で交換日記をしたり、『せっかくだから』という理由で特に意味なく男と同じ服を買ったり、と、こちらもまた「だから女って生き物はわかんねぇんだよ」とおもわず詠嘆してしまう。

それにしても佐藤敦士が着々とドロップアウトの路へ進んでいるようで見てみて楽しい。レールの上を走る電車のごとく決まった道筋で人生辿ることができるなど、はっきりいって若人の奢り。裁判官なんかなるななるな。ぬははは。
もっといっぱい傷ついて、もっといっぱい失敗しろ。とちょっと年上の読者から意地悪な一言を贈りたい。