「がんばっていきまっしょい」

続いて、ドラマに関する話題。

ドラマ「がんばっていきまっしょい」を偶然見た。
7、8年前に田中麗奈主演で上映した映画のドラマ化作品なのだが、実はいうと、わたしはこのドラマの舞台である高校のOBだったりする。映画上映時は、それがなんだか気恥ずかしくって見ずにいたのだが、ちょうどテレビがついていたので、なんとか恥ずかしさをおさえてドラマ版をみることにした。ら、もう、高校当時の個人的な記憶が馬鹿みたいに甦って、参ってしまった。

いやさ、もし、あなたの出身校が舞台の青春学園ドラマを見るっつったら、もう、そういう形でしか作品とかかわれないっしょ。夏服は私の頃と変わってしまってなんだか可愛くなってしまっていたけれども、冬服は以前のデザインのままだったし、そういうのとか見ちゃうとさぁ、ねぇ、部活動室に額縁に飾ってある校訓「自律 協同 感動」(――母校のは正しくは「自律 協同 創造」)に笑ったり、なんでボート練習を梅津寺でなく、今治かなんかで練習しているの?とか、それにしても俳優みんな伊予弁下手だなぁ、あ、でもさすがに松山人の友近は問題ないな(――というか、友近は標準語でも伊予弁のイントネーションがあまり抜けていないように見える。まろんとして日向くさいいかにも伊予弁っぽいしゃべり方をする)とか、そういう細かいところとか気になったり、それにしてもこのボート部の五人、いかにもうちの生徒っぽいわ、綺麗な子もそうでない子もとにかく化粧っ気ナッシングでもっさりしていて真面目で、なんか妙に恥ずかしげもなくカギカッコつきの『青春』するような感じ、確かにいたいた、なあんて、勝手に得心したり、いやぁ、もうね、不意にノスタルジーしてしまって、本当困ってしまった。

ちょっと調べてみたところ、映画版だと校内でのロケのシーンが多いらしい。テレビ版も第一回で我が校でのロケのシーンがあったらしいが、映画版はタイトルバックからして、校門から校舎を正面に構えた絵だったり、さらに校舎から見望む松山城とか、県の文化財指定になっている明倫館とか、樹齢120年を越す母校のシンボルツリーの青柳とか、生徒、教員、OB、OGなら知っている「ここだよね」という校内の重要ポイントでのシーンがいっぱいあるらしい。エキストラで私の知っている学校関係者なんかも映っていたりしてね。更に松山のいろんな風景が織り込まれているようで、あー、なんか調べるほどに、より見たくなってしまった。そろそろ松山を離れて10年近く経とうとしているものなあ……。

この「がんばっていきまっしょい」のエールに象徴されるように、わが母校というのは私が在籍した90年代中頃でも、いまだに嘘臭いほどに「バンカラ」で「健全」で「真面目」で「ひたむき」で「青春」でなんか「仲間」な感じで、という、退廃という言葉がまったく辞書にない学校でして、だからこの物語の設定も、まぁひとつの虚構なんだけれども、「でもあの学校だったらあるだろうなぁ」という、そういうリアリティーをOBである私は感じてしまった。普通であればドラマやマンガでしかありえない「学園がひとつの幸せなお祭り状態」というのを味わおうと思えば容易に味わえる場だったのですよ、あの学校は。や、マジで。そういう空気をなぜか教師も地域の方も作ってくれるのですよ。 ―――これは教師の多数が元々OG、OBであったというのが密かに大きいのかも。よく授業の合間に"私が生徒だった頃"の話する先生いたものなぁ。団塊の世代で教室が足りなく理科室をホームルームにあてがわれた時代のOB先生の話とか、 1945年の二学期の話をする定年間近の先生とかいたものなぁ、空襲であたり一面何もなくなって松山駅から学校が見えた、とか。そういうところもあって"伝統を守る"という風土が他校と比べていっそう強いのかもしれないなぁ。って、まぁ、それは学校関係者でも松山人でもない方にはそれはわからない話で、そうでない視聴者はこの物語を「現代に失われつつある健全な青春へのノスタルジー」と読み解くのでしょうが。

とはいえ、遠い昔の漱石の「坊ちゃん」といい、このドラマと映画といい(――ちなみに原作者の敷村良子さんもOGであるとのこと)、なんというか、いろんな人に愛されて幸せな学校だよなぁ、わが母校。在校生時代はどうにもその健全さが居住まい悪くってそっぽを向いてしまってばかりだったわたしだけれども、それでもそれなりにあの場で受け入れられていたわけで、そう思うと、やっぱり暖かい学校だったなぁと、懐の大きい学校だったのだなと、いとおしく感じずにはいられません。

ちなみに「がんばっていきまっしょい」のエールは本場は「しょい」で合わせた後「オー ウェイ」で〆る時もありますんでそこんところ、よろしく。このエールを映画経由、あるいは映画から引用したであろうモー娘経由で知ったであろう方はそこがなっておりませんぞ。ぷんぷん。