私の母が致命的な料理音痴だったせいか、わたしは小学生の頃から料理を頻繁にするようになっていた。最初はもちろんインスタントラーメンとか冷凍食品とか、ほとんど料理といえない代物ではあったが、高校に進学する頃にはもう普通に、マーボー豆腐とか、鳥のからあげとか、月見うどんとか、一品料理を勝手に作っていたし、大学に進学して一人暮らしするようになってからは、現在に到るまで、わたしはほぼ毎日台所に立っている状態で、そのせいか、わたしは変に料理が上手い。

「変に」というのは、思いっきり手抜きで邪道で、コストと時間重視で、「本格派」とか「こだわり」とか「厳選された素材」とか「じっくり煮込んだ」とか「繊細な味付け」とかもう、そういう方向とは確実に一線を画した路線。つまりはお安く簡単で、そこそこ美味いもの、という、だらしがない主婦の料理なのだ。

しかも私の料理はひとことでいえば「化学調味料・命」。わたしの台所には、砂糖壺、塩壺のとなりに「化学調味料壺」がしっかりあって、そんなかには、1kg 398円の業務用の化学調味料がたっぷりと、もう、いくらでも使ってくれろ、という勢いで鎮座ましていて、これを和洋中関係なく何の料理にもドバドバ入れる。入れまくる。

あんね、私から言わせていただければ、世間の人は化学調味料の本気の力をあまり知らないね。料理に化学調味料使う人も、ホンの気休めのように、パラパラっと一振り、とか、小袋に入ったのひとつ、とか。こんなもんじゃ、化学調味料の実力は出ないのですよ。もっと過激にかつ繊細に使っていこう。煮物とかは大胆に、大さじ一杯位は入れていこう。それくらい使うと、「アレ、もしかしてこれって、本物のいい出汁を使った時の八割ぐらいの位置にはいっている?」ってあたりまで行きます。マジで。あんまりにも入れすぎると頭痛くなるけれども。
正味の話「なんかこの料理、方向としては間違っていないけれども、味がパッとしないな」って時は、料理酒をちょっと入れてひと煮立ちさせるか、塩か化学調味料で整えれば大抵何とかなる。というか、なんとかさせる。

月桂樹とか豆板醤とか味醂とかニンニクとか生姜とか、料理に案外欠かせない強い味方の存在を知るのも大切だけれども、料理を下手な人は、化学調味料と料理酒の使い方からまず知るべきなんじゃないかなぁ。案外大胆に何の料理に入れて大丈夫なのよ、このふたつは。入れたことによる失敗ってのはもう、全然少ないし、入れたことによる効果が大きい料理というのはホンと、驚くほど多い。きわめてローリスク・ハイリターンな調味料なので、がんがん入れて色々試してみて、自分の好みの按配を決めていくといいと、わたしは思う。