ある知人から聞いた話なのだが、ネットでは、迂闊に触れてはいけないテーマが三つある、のだそうだ。ひとつが「宗教」で、ひとつが「政治」、最後のひとつが「主婦」だという。

こういってはなんだが、「宗教」と「政治」というのは、なんとなく、わかる。キャッチの強い話題であるし、なにより、そういったことに対して狂信的な人というのが少なからずいるということはよく知られていることであるから、私自身も取り上げる時は不用意な発言で思いもよらずに衆目を浴びたりしないように、いつもより気を使うし、というか、めんどーくさいからそんな話題しないよ。まあ、打ち上げ花火のように瞬間的に耳目を集めるのであれば、格好の話題ではあるけれどもね。
が、そこにプラス「主婦」というのは、ちょっと意外だったのだが、ふと思い返して、ああぁぁ、と納得すること、しきり。たしかに、めんどうくさい主婦の方につかまると非常にめんどうくさい。

こういう話題なので名前をふせるが、某サイトに、料理の献立に関する夫と妻の些細な会話の端々から、日常生活にありがちな男女の価値観の違いやそこから生じる会話のニュアンスの微妙なズレを男性側から描写したテキストがあり、それ自体は「あるある系」のペーソスと微笑ましさのあるものだったのだが、これに「主婦は料理の献立を考えるの、大変なんです、何でわからないんですか」といったような、なんというか、ちょっとピンぼけで妙にルサンチマンに満ち溢れた、おそらく女性側からの書き込みがあり、管理人氏が「こまったなぁ」といわんばかりに穏便にあしらっていた、というのがあった。

こういったものは、つまりは、いわゆる「PTAのおばさん的なご意見」というものであって、強烈な自己肯定と、被害者意識と、偏狭な視野と、可塑性の低い抽象的な常識や善によって塗り固められた「正しいのかもしれないけれども、わかっていない、大きなお世話なご意見」なわけだが、確かに程度の差はともあれ、方向性としては「政治」や「宗教」に狂信的にのめりこむ人と同じっちゃ、同じだよな。ともに、己れの小さい物差しで、はるか無限大の彼方まで計ろうとするような、そんな無知と尊大さが被害者意識の裏に見え隠れしている。そんな自分にしか通じないルールで全宇宙を捉えようとするなよ。

自分は絶対に正しい。なのになんで誰も認めてくれない。世の中はどうかしている。むしろ正しいからこそわたしは世の中で上手くいかないのか。でも間違ってはいない。間違っていないのに。――どんなジャンルだろうが、こういう偏狭なルサンチマンに満ち満ちた方とはお近づきになりたくないものです。

それにしても、「宗教」と「政治」がそうした困った人たちの受け皿になるというのはわかるけれども、何故そこに「主婦」なんでしょうか?ちょっとそのへんわたしは、わからないなーー。そんなに主婦って―――てこれ以上、がたがた言うと誘蛾灯のように色々とおびき寄せてしまうので(――って、もう、手遅れ?)、今日はここまで。