◆ 河合奈保子  「愛のコンサート」



 83年作品。20歳を迎えた河合奈保子の記念リサイタルを抄録したビデオ。83年10月10日、芝・郵便貯金ホールにて。
 だっっさーー。悪いけれども、ダサいよ、奈保子。どこのライターが書いたのか、どうでもよさげなぬるい内容の語りを、一生懸命におぼえて、吐息混じりにシリアスな態で長々と語った後に「それでは一曲聞いてください」という感じでバラードを歌い始める奈保子。ふっるーーーっ。くっさーーーっっ。眩暈を感じるよぅ。これは……ちょっとねぇ……、いくら83年だとしても、ナシでしょ。これでは明菜・聖子に水あけられるよ。
 選曲も「愛は限りなく」とか「あなたの空を翔びたい」とか「片想い」とか「秋桜」とか、ベタなんだよな、これまた。こういうお笑いすれすれの演出を平然としてしまう芸映スタッフ、まったくわからんっっ。それを無意識過剰にこなしてしまう奈保子もわからんっっ。
 河合奈保子がどうして二番手どまりだったか、その原因がなんとなく、わかった。とはいえ、歌はうまいです。あ、第二部のヒットメドレーはフツーで、これはいい感じ。


◆ 工藤静香  「はじめの一歩」



 工藤静香の初のソロツアーの模様を納めたライブビデオ。88年9月8日、渋谷公会堂収録。
「MUGO・ん……色っぽい」リリース直後、いよいよ大ブレイクを迎えようとする彼女の姿をおさめている(――このコンサート終了直後に「ザ・ベストテン」に出演、その週に初登場となった「MUGO・ん」を歌っている)。
 これは、熱い。まるで渋谷公会堂がライブハウスのよう。歌手とオーディエンスの距離が近く、熱気と一体感を感じるアイドルらしからぬライブ。まさしくこれからトップに登ろうと闘志を燃やすひとりのアイドルと、それに熱いまなざしでみまもるファンの愛のエール交換のようなライブ。
 「おれたちがてっぺん取らせてやる」 そうオーディエンスが、熱くエールを送れば、その倍、静香がボーカルで応える。その必死の呼応が、切なくも美しい。そこには仁義すら感じる。この若さが、憎い。