春。草木も萌えいずれば、わが妄想も萌えいずる。

 エート、「海のアリア」の終わった後のエピソードね。
 アベルとアリアドのふたりはベルンモリンの演奏家と楽器として、宇宙をまたにかけて活動しようか、という頃かな。
 いつものアレな感じで、喧嘩をはじめるわけね。
 「なんで俺のいうことを素直に聞けないんだ」
 「なんで俺の話に耳をかさないのさ」
 てな、感じでね。
 で、アベルが家出をするわけよ。
 「好きにしろ」
 「じゃあ、好きにするよ」
 とかいって。
 で、家出するのだけれども、今回はアベルの悪戯心で、アリアドの宇宙船に乗りこんじゃうのね。
 何回か、アリアドが操作しているのを見ていて、
 「(好きにしろっていうなら、円盤だって好きに使っちゃうもんね)」
 と。で、飛び立つ。
アリアド、あわてて外に出るも手遅れ。
「バカヤロー」と大声で叫ぶのを、窓から舌を出してからかうアベル

 ――てわけで、宇宙へ飛び立ったはいいものの、やっぱり操作がわからないアベルは、自動操縦にまかせたまま、不貞寝。まぁ、向かっている先で考えよ、と。
 で、着いた先は、アリアドさんの故郷の星・アダン、自動操縦で一番に登録していたんだね。

 「(ふーーん、ここがアリアドの故郷なんだ)」
 と、アベルは、家出のはずが思わず観光モードに入るわけですよ。
 と、観光して色々とアベルは見えてくるわけね。アリアドの色々なことが。
この星は、アリアドがいうように、すべての人間関係が支配と服従で成り立っていて、「友人」というカスタムがない星なわけで、そこで「なんじゃそりゃー―」とアベルは、カルチャーショックに陥って、で、アリアドはあれでも充分俺と馴染もうといろいろ合わせているんだなぁ、と、慮ったり。
 また、アリアドの幼い頃を知る人と会って、プレイヤーとしての彼の類稀なる才能やら繊細さやら、あるいは才能ゆえの彼の孤独に触れたり、そこでアリアドの楽器である自分への矜持が芽生えたり、それを
 「(馬鹿、俺なにあいつを認めようとしているわけ?)」
 と否定したりするわけですよ。

 で、アベルは、アリアドの少年時代を追いかけるように星を探訪したすえにアリアドの少年時代、彼がいつもそこにいたという、森の空き地の大樹の木陰に、たどりつくわけですよ。
 で、アベルは樹の根元に寄りかかるように座って、葉の重なりや緑の影や木洩れ日を見て、かすかに聞こえる鳥のさえずりや風の音を聞いて、ふと思うのね。
 「(歌いたいなぁ)」
 と。
 「(この美しい風景を歌にできたらどれだけ素敵だろう)」
 と。
 で、アベルは、喉を震わせて歌う。と、その瞬間に気づくのね。
 「(あぁ、そうか。おれは、アリアドがいないと『歌う』ことができないんだ)」
 と。
 「アリアドに、会いたいなぁ」
 アベルが、初めて声に出して呟いたそのときに、緑影の向こうからアリアドさんがちょっと恥ずかしそうな困った表情をして登場するのですよ。
 で、再会。
 「俺、今、なんだか、『歌』が歌いたい気分なんだ」
 と、座ったまま、アベル答える。
 「じゃあ、歌えばいいじゃないか」
 と、かがみこんでアリアド、返す。
 「でも、俺、アリアドがいないと、歌えないからさ」
 アベル無邪気に笑う。
 アリアドは嬉しそうにアベルのとなりに座り、アベルの喉をゆっくりと撫でる。
 アベルの体と心は静かに解放され、そしてみずみずしい『歌』が、アリアドの森に響き渡った。

 ――て、いう。こんな「海のアリア」のアニパロ同人短編を誰か作ってください。
 てか、このまんまを漫画にしてわたしに見せてください。
 てか、アニパロはプロット考えるのは、楽なんだけれども、きちんと小説として書くのがだるすぎです。
 てか、萩尾望都の同人はなんで少ないのですか?
 やはり聖域ですか?
 おれは萩尾望都で萌えたいんだっつーのっっ。