「吾輩は主婦である」

 話題のクドカン脚本のTBSの昼ドラ。出演・斉藤由貴及川光博竹下景子
 感想文で松尾スズキの本をとりあげたり、やたら「大人計画」に親和性のある当サイトだけれども、そんなつもりはさらさらないはずで―― って、言い訳しようと思ったけれども、やばい、これ、フツーに面白い。ってか、ビデオ録画して毎日見ています。今回のドラマのテーマは、たぶんきっとこのふたつ。

 ・久世光彦プロデュースの「TBS 水曜劇場」の世界の再生。
 ・斉藤由貴、「おっかさん女優」としての再生。

 ってか、絵が、もうどう見ても久世ドラマなのね。うそ臭いほど昭和な下町セットで、近所のおばちゃんとかがずかずか朝飯の茶の間にあがりこんだり、しかも、食卓前での人の並びも、かつてのメシ食いドラマオリエンテッドなコの字配置――カメラの前のだけ不自然に人が座っていないアレね、で、そんなこんなでいろんな人が乱れてドタバタドタバタ。
 しかも時に、小芝居あり、踊りあり、歌あり、という。これ、どう見ても久世ドラマだろ、と。往年の「久世水曜ドラマ」の世界を現代的に再生するには、どうすればいいのか、というスタッフの挑戦をひそかに、感じますです。

 でね、もいっこ、主演の夏目漱石の魂が乗り移った主婦を演じる斉藤由貴がねー―、これがいいのよ。
 短い間に3人ものお子さんをころころ産んで、産休開けの斎藤さん。腰や二の腕あたりに、やたら貫禄ついちゃっていて、「あぁ、もう、どっから見ても堂々たるおっかさんだなぁ」という感じなんだけれども、そんな容色の衰えが全然、見てて悲しくない。
 ケラケラ能天気にあっけらかんと笑うのが似合っていて、あぁ、こういうおっかさんに育てられる子供は幸せだろうなぁ、という、そう感じるのね。で、しかも、それが、ケッコー可愛いのよ。ちゃんと「斉藤由貴」なのね。ちゃんとアイドル時代の「斉藤由貴」を感じる。そういう芝居だし、本なんだよね、これ。
 クドカンさん、雑誌対談で斉藤由貴のファンであることを公言してたけれども、ほんとうだな、こりゃ。憑依癖があって、大学時代はミュージカル研究会に所属し、いきなり小芝居や歌を歌う斎藤さん。妄想癖が強く、無駄な文才があって、暇な時にチラシの裏にポエムをつらつらと書き「わたしって、天才」とういういとしている斎藤さん。こういう設定や、描写ってのは、ちょっと(――かなり?)腐女子入っている斉藤さんのキャラクターを知っていないと出ないと思うんですよね。えらいっっ。でね、この「可愛いけど、ちょっと腐な、どすこい天然奥さん」ってのはねーー、いいとおもうんだ。これからの斉藤由貴はこれだな、と、わたしは思いましたね、ええ。

 なわけで、「大人計画」が好きなサブカルッ子、久世ドラマが好きだったおいちゃんおばちゃんはもちろん、ちょっと腐女子成分、ミューオタ成分はいっている、かつての乙女だった主婦の皆さんも、「吾輩は主婦である」を見るといいとおもいます。ミッチーも歌い踊るしね。

 ちなみに主題歌の「家庭内デート」(歌うは斉藤由貴及川光博のユニット「やな家」)、わたし大好きです。一番の「ねぇ 聞いて おかあさんね 好きな人がいるの それはね それはね お父さん (いっちゃった)」の部分とか。できあがりまくっているバカ夫婦っていいよね。
 万にひとつの可能性くらいしかないだろうけれども、こういう歌がヒットしてほしいっ。こういう歌が街に溢れる世界は、絶対、平和で幸せで素敵だと思うのです、わたしは。や、マジでっっ。