田中裕子 「泳いでる……」

 86年作。田中裕子のファーストアルバム。
 当時不倫まっただなかの沢田研二と、当時の沢田の個人事務所社長・大輪茂雄がプロデュースしている。作家は、沢田研二佐藤隆、BORO、松本一起、湯川れい子、全編曲を深町純が担当。
 なわけで、「架空のオペラ」〜「Co-colo」時代のジュリーそのまんまの異国情緒路線のアルバムなんだけれども……、これってそのまんまジュリーが歌ったほうがいいような……。ってか、これ、露骨にオーバープロデュースだよな。
 田中裕子の歌唱も、愛と女優魂でなんとか乗り切っているというところで、彼女の歌う必然というのは、ひとまずあまり感じられないし、どこまでも余技そのものという感じ。また、よくある「女優の歌」的な色気も、さほど感じないんだよね。
 ジュリーが、あまり深く考えずに今の自分が好きな歌、自分の歌いたい歌を目の前に持ってくるのを「あ、沢田さん、こういうのが好きなんですね」って感じで、裕子さんは恋人の思うにあわせて歌っている、という、そんなアルバムか、と。曲自体は、いいもの多いんだけれどもなぁ。
 当時の女性歌手だったら、明菜サマとか高橋真梨子とか、そのあたりのラインの歌手が歌ったほうが……って、失礼?
 ま、ジュリーがプロデュースしたかったんだ。仕方ないとしか、いいようがないわな。女に惚れて、あっけなくこわれるジュリーも、わるくないです。――って、結局それかい。