手嶌葵 「ゲド戦記歌集」

 「ゲド戦記」タイアップの彼女のファーストアルバム。全10曲のフルアルバムなのに2100円とリーズナブル。映画でも、ここから何曲か使われるのかな? 

 高原の朝靄のごとく、清澄なのにスモーキーな彼女の声にあわせて生ピアノ、生ギターメインの、アコースティックで保守的なサウンドで覆い尽くされていて、とくにこれといった趣向はない。
 まぁ、手堅いといえば手堅いんだけれども、イージーリスニング的に、つるっと流れていってしまう。眠くなるアルバム。
 例えば、1、2曲壮麗なオーケストレーションをバックにしたり、あるいはエスニックな無国籍サウンドしてみたり、派手な曲があってもよかったかな、と。
 聴衆を圧倒する存在感を、もっと出して欲しかった。私は手嶌葵でもっと驚きたかったのに。そのポテンシャルはあるはずなのに……。
 いかにもジブリプロデュースらしい、あまりよくない意味で「優等生」的に、小さくまとまってしまっている。

 とはいえ、メロディーメイカー・谷山浩子の実力はしっかり確認できたから、谷山ファンのわたしとしては、それでよし。
 今秋に出る谷山浩子のアルバム「テルーと猫とベートーベン」(――すげータイトルだな、おい)でこの「ゲド戦記歌集」収録の半数近くの楽曲をセルフカバーするらしいので、そこでのアレンジメントに期待しよう――って案外ピアノ一本の似たようなアレンジだったりしてね。

 で、手嶌葵
 次は「全作詞、中島みゆき・全作曲、谷山浩子」なんてアルバム、つくったら面白いと思うんだけれども、どうでしょ。
 谷山メロディーと中島リリックの融合を可能とするキャラだと思うんだよね、手嶌さん。
 ともあれ、ヤマハの箱入り娘として、大切に育てて欲しいものです。