八神純子 「BEST OF ME」

 ヤマハ時代の全シングルを収録したベストアルバム。ヤマハ時代のものはいろいろベスト盤が出ている彼女だけれども、これが一番コンパクトかつヤマハ時代の彼女のエッセンスがつまったものか、と。
 そけにしても八神純子、ハンパなく歌が上手い。惚れます。ただ上手いだけでなく、声がとってもチャーミング。正統派でかつ、色っぽい。圧倒的な歌唱力をもち、その魅力を十全に知っているものが、そのスペックをフルに活用できる曲を作る。八神純子の武器って、ズバリこれね。
 「みずいろの雨」「ポーラースター」「思い出は美しすぎて」の初期ヒット曲がイイのはもちろん、「パープルタウン」以降、湿り気の強い安定歌謡路線から色々と試行錯誤を重ねるようになり、セールス的には、少しずつ低迷していくようになる後期も、聞きごたえは抜群。
 ハードロックなアプローチにドスをきかせた低音に新しい魅力を感じる「I'm a Woman」、一方、つやっつやのファルセットが真夏の蜃気楼のように蠱惑的な「サマー・イン・サマー」、アニソン風の無駄に大袈裟な弦オケに、詞もこれまた七つの海とか火の鳥とか無駄に大袈裟で、どう見てもアニソンな「恋のマジックトリック」、後期作品の個人ベストは、大サビの筒いっぱいの歌唱が緊張感を催す「黄昏のBAYCITY」かな。
 70年代後半〜80年代前半のど真ん中な王道ポップスが堪能できる1枚。このベストと、後にリリースされたバラードセレクションの続編ベスト「BEST OF ME 2」でヤマハ時代の八神の名曲は八割方おさえられるので(――「デジャブ」や「Dawn」や「夜空のイヤリング」がないやんってのはあるけれども、ね)、是非聞くように。ここ、試験に出ます。