MINAKO with WILDCATS 「WILDCATS」

 ラ・ムー取り上げたならこっちも取り上げなきゃなんめーべ。というわけで、MINAKO with WILDCATSのファーストアルバム。88年8月リリース。
 こちらも意外や意外フツー、というか、もしかして良作? アルバムに統一感がある。全曲の作詞を松本隆が担当しているせいか、ハードロック色が強いのに、青春の光と影の漂う切ない雰囲気がある。「カシスの実」や「School Girl Blues」など、地味に佳曲。松本隆の作品って、どうやろうとも品が出てしまうんだよね。
 本田美奈子は元々歌謡ロック傾向の強かったわけで、そこでロック色のより濃くなった前作「Midnight Swing」をからさらに発展してワイルドキャッツヘと、って、ラ・ムーとおんなじようなこと書いているよ。
 ま、そういうわけで、音楽的にいきなり別枠に飛躍したってわけではなく、成長の過程を追うとここにたどり着くだろうな、というのは、わかる。バンドブーム到来を受けて、HM・HR色のより強いハードポップの美奈子、と。それにどれだけの需要があったのかはやっぱり謎だけれども、とにかく美奈子は疾走したわけだ。
 美奈子は、ハードロックするには、ボーカルが細いのが弱点なんだけれども、改めて聞くとその弱点が魅力に聞こえる。
 本田美奈子というのは、どの音楽ジャンルに挑んでも、本格的になるには、あと半歩届かないところがあるのだけれども、そこがなぜか魅力になる、という不思議な歌手だ。届かない空白の数センチが、切なさになる。
 ー―と、ここまで書いて、先日彼女の一周忌を迎えたことにふと気づく。冥福を祈る。