◆ 「アイラブパパ」猪川朱美

 「晴明」「朝霧の笛」(「紅蓮の義経記」所収)など、時代物のアクションシーンがカッコいい猪川朱美さん。「ネムキ」に久々に彼女の名前を見つけ、購入。今回は現代モノなんだ。

 滝本敬二。39歳。独身。ミュージシャンを廃業し、今は田舎暮らしのハンパな音楽ライター。ある日、彼のもとにひとりの少女がやってきて、こういう、
 「わたしは、あなたの娘のゆかりです。ママのことを覚えていますか」
 しかし、女性遍歴の多かった彼はなにも思い出せない。それ以来、毎年年の瀬になると、自称娘のゆかりが彼のもとにあらわれるようになって――。
 子を思う親の気持ち、親を思う子の気持ちが不器用に交錯する、つまりはフツーにいまどきの、ちょっといい話。このまんまで邦画になりそう。こういうリリカルで爽やかなモノもかけるんですね。
 逃げ癖の強いダメ中年男の主人公と、そんな彼を愛する周囲がリアリティーをもって描かれているところがなかなか大人味。

 それにしても、この人、絵が地味にうまいっっ。ネームなんて、完璧に近いんじゃなかろうか。ネームのうまい漫画は、読んでいる時、絵なのに動くんだよね。
 彼女は、地味な洋服に身を包んでいるけれども、実はナイスバディーのおねぇちゃんって感じ。もっと自信を持って、もっと華やかになっても罰はあたらないと思う。そしたらもっと人気が出るんじゃないかなぁ。