宮本文昭  「AIR」

アリア

アリア

 先月、オーボエ奏者として引退した宮本文昭氏の01年のアルバム。
 これは「宮本文昭 with 書上奈朋子」という名義でよかったんじゃなかろうか。全10曲中8曲が書上奈朋子の作・編曲・ボーカルである。
 書上嬢の超現実的なアレンジメントと妖しいウィスパーボイス、そこにさわやかな宮本氏のオーボエの音が乗る。宮本文昭名義で出すには少々オーバープロデュース、という感じ。でもいい。
 書上プロデュース作品には、全て「based on "○○"」と元ネタが記載されているのだが、これが、あの曲 ? と驚きの連続。「アメージンググレース」やチャイコフスキーの「白鳥の湖」、ラフマニノフの「ヴォーカリーズ」、ブラームスの「ハンガリアン・ダンス」、エルガーの「威風堂々」など、衆知のクラッシックの名曲を大胆に改変、現代的な意匠をそこに纏わせながらも、しかし原曲の気品を決して損なわせないのがさすが天才・書上奈朋子YMOの「BGM」バリに重々しいテクノにしちゃった「アメ―ジンググレース(techno hymn)」なんて、意外すぎるけど、面白い。
 クラッシックは、伝統があるから、評価が定まっているから、いいわけではないのだ。普遍的な官能と興奮がそこにあるから、いいのだ。いいかえれば現代に通じないクラッシックなんて、ただの古ボケたガラクタに過ぎない。
 クラッシックを額縁に飾って拝みたおしたい権威主義者には決してお薦めできない1枚。こういうのを楽しめないクラッシックファンは、似非だね。