あぁ……。TSUKASAさんがどっかいっちゃった……。
 淋しいなぁ……。

 サイトをやっていると、現実では会ったことのない人からメールを頂くことがたびたびある。
 そこからある程度親しくなり、何度かメールをやり取りすることも時にはある。
 とはいえ、わたしにとってその人とのつながりは、メールアドレスしかない。
 そんなメールがあの日、宛先を失いもどって来る。
 他に連絡先はない。
 まぁ、いい。相手にとって、私はそういう程度の人だったのだろう。
 私は静かに諦める。

 お気に入りに入れていたサイトが、更新回数が減り、そうしているとおのずとこちらが訪問する回数も減り、そしていつのまにか、閉鎖している事を知る。
 多くの個人サイトはボランタリーによっている。
 だからサイト運営は全ての束縛から解放され自由である。自由ゆえにサイト運営はどこまでも孤独だ。
 更新を待ち望んでいるサイトなら、せめてなにかしらのエールを送りたい、しかし、最良の術を私は思いつかない。
 相手の重荷にならず好意をしめすというのは、なかなか難しい。一定のスキルを要する。
 消えたアドレスを前に、なんともならなかったのかと思いながら、私はまた静かに諦める。

 このwebの空間は、とても不思議だ。
 その先に数多の人間がいると思ったのが、実は幻だった。
 そこにはなにもない。
 そんな風に思える時がある。
 確かに見えたはずの相手に投げたボールは、しかし受け取られることなく、虚しく何度かバウンドして、遠くへ転がっていく……。 そんなイメージが、時々広がる。

 ここには、確かな肉体はない。
 肉体がないから、滅びることもない。
 滅びることのない世界、それは時のない世界だ。
 それは――彼岸の世界でもある。
 ただ言葉だけが、意識の断片だけが漂っている、楽園の海。
 ここでは誰しもが幽霊だ。
 わたしはわたしでありながら、ふわふわと浮いている。
 食べることもなく、排泄することもなく、 老いることも、セックスすることもなく、 時の止まった世界で、海月のように漂っている。
 それはとびきり幸福で、とびきり不幸な世界だ。
 ここは世界の最果て――全てがここにあり、そしてなにもない。
 わたしはここにいる。そして、あなたも――。