「ありがとう阿久悠さん」

 NHK阿久悠の追悼番組。亡くなった翌々日に特番放送って、早っっ。あらかじめそういった情報が業界では流れていたりかなぁ。
 なんかもう、気分は大晦日。こゆい歌謡曲の世界の一時間半。堪能。

 とはいえ、わたし個人、実は、阿久悠ってあんまり作詞家としてはあまり好きなほうではない。
 てか、野球大好きだったり、聖女崇拝だったり、いわゆる新聞の大見出し的な社会の動きに妙に関心を持ったり、と、あんまりにも典型的な「ザ・日本のおっさん」過ぎるというか、男性的な価値観のど真ん中にどかっと居座っていて磐石という感じが、あんまり自分好みではないなぁ、と。
 てか、阿久悠の女歌って、こっ恥ずかしいんだよね。
 男性が編集しているのがまるわかりな女性週刊誌的というか、宇能鴻一郎の「私、感じちゃうんです」的文体というか、実態とは違うなんともいえないむずがゆいズレがあって、そのズレに保守的な男性の夢見る女性像てのが垣間見えて、なんともかんとも、ってなっちゃうんだよね。阿久悠の詞の世界が好きって女性は、きっと少ないんじゃないかなぁ。
 とはいえ、男歌になるとその保守的な男性観がぐっと美点になるわけで、てわけで、やっぱり阿久悠の本領はジュリーの諸作をはじめ、「闘牛士」「また逢う日まで」「時代おくれ」など、男歌にあるのだ、と、そんなこんなを確信した次第。
 あと、女歌でも、ピンクレディーの諸作をはじめ「ねらわれた少女」(――これ、傑作すぎる)や本田理沙の作品などは、どっか自己対象化してて、妙に乾いた質感があり、これは、絶品。これは阿久悠でしかかけないもののはず。
 なんだかんだいって偉大な歌謡曲の巨人であったことよ。合掌。