研ナオコ 「Naoko VS Aku Yu」

 さらに阿久悠追悼。
 大ヒットした前作「Naoko VS Miyuki 〜中島みゆきを歌う〜」に続いてリリースされた阿久悠作詞限定のアルバム。79年にリリースされた。「ざんげの値打ちもない」「たそがれマイラブ」「北の宿から」「街の灯り」「あざやかな場面」などのカバー他、「陽は昇り陽は沈み」「口紅をふきとれ」などナオコのオリジナルシングルも収録。同じ作詞家という縛りのカバーメインのアルバムってこれしかないんじゃなかろうか(――と思ったら、坂本冬美も95年に阿久悠作品のカバーアルバム出してるんだって)。
 阿久悠の詞のいくつかある特徴のひとつ、それはクールネスだと思う。対象にぐぐっと入り込まずに距離を置いた感じ、あくまで客観的で乾いているのだ。
 演歌も、演歌的ないかにも湿った世界を描いているようで、まるで、長編小説のワンシーンを切り取っているというか、その画に「――という世界がありましたよ」というキャプションがついているというか、そういう感じで、結構その世界を対象化している。これが研ナオコの歌唱にベタはまりしている。
 研ナオコも、涙混じりに湿っているようでいて、実は結構醒めている部分があるのだ。研ナオコの歌はふっと呟きのようにさりげなく歌の世界に入って、感極まって泣き崩れる寸前のところですっとずらしていくところがある。
 この歌唱による「たそがれマイラブ」「あざやかな場面」「別れの旅」あたりは絶品。オリジナルアーティストよりも、私はこっちのほうが好きだぞ。
 ただ「陽は昇り陽は沈み」「口紅をふきとれ」といったオリジナル作品は微妙な出来。作曲は全て都倉俊一なんだけれども、研ナオコにはアクトクコンビでなく、三木たかしとか、小林亜星のほうが良かったんじゃないかな。