谷山浩子 「片恋の唄」

05年「月光シアター」収録。
ぼうっと聞き流していて、はっとさせられた。
さりげなく凄い歌だ。

茶碗に恋した男のように
茶碗に想いを語りかける
茶碗が時々相槌をうつ
ように思えて胸が震える

 片想いの悲しさ切なさ滑稽さみじめさ独善さ、それらすべてがこのワンフレーズに凝縮されている。凝縮されていて、美しい。
 「相槌をうつ」と「ように思えて」の間のとりかたが、絶妙。これが谷山浩子。「意味なしアリス」の「――というのは実はいいすぎで」のあたりなどでも顕著だけれども、ふとしたスキに手品のようにトリッキーに視点がかわって、世界がズレる。主体が客体化する。
 だから谷山浩子は、天才なのだ。