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わたしにとって名曲ってなんだろうなと、ふと思ったので、これからしばらく思いつく限り挙げてみる。やっぱり、というのばかりが並びそうな気がしないでもないけれども――。
◆ 久石譲 「View of Silence」
ジブリ映画、北野映画には欠かせない作曲家・久石譲。
有名CM音楽も数多く手がけており、人の耳に残っている曲の多い彼だけれども、私が一番好きな曲がコレ。最高傑作なんじゃなかろうかと思っている。
89年の「PERTENDER」という久石譲自らが歌ったAOR系アルバムの最後を飾るインストゥルメンタルなのだが、ナウシカよりもラピュタよりももののけ姫よりも菊次郎の夏よりHANA-BIよりも、わたしはコレなのだ。
最初に聞いたのは高校生の頃だが、いまだに聞くたび、眩暈のような感覚に襲われる。
平明でポジティビティーに溢れるオーケストレーションが魅力の彼にあって、この曲はめずらしくも荘重で悲劇的。ピアノと弦が追い掛けあうように展開する後半部は、感情だけが身の内に波打ってなにも言葉にならない。
ただひたすらに、哀しいのだ。
この曲で表現されているのはオイディプス王のような宿命的な破局なのでは、と思っている。逃れられぬ運命のままに滅び行くものの美しい哀しさ。わたしは「破滅の美」というのに、とことん弱いのだ。
某有名動画サイトにライブ映像があるので、もしよかった聞いてみていただきたい。――でも、これでなく「PERTENDER」版が一番好きなんだよなぁ。