中江有里「メモワール」

92年発売。アイドル氷河期の90年代前半に、女優活動を中心に善戦した中江有里のファーストアルバム。
アレンジャーに萩田光雄瀬尾一三をメインに据え、80年代の保守的アイドル歌謡が展開。お手本は同じくアイドル女優だった薬師丸ひろ子斉藤由貴あたりかな。
まだまだ声がこちこちと硬くって色気が足りないけど、アイドルのファーストアルバムとしては安定した歌唱で、低音に説得力がある。特にすがすがしい生真面目さが漂うところがチャーミング。
図書委員タイプというか、地味な優等生タイプというか、思慮深そうなうつむき加減の眼差しときつく結んだくちびるが意志の強さを感じさせる彼女の容姿、そのまんまの世界が歌でも広がっている。
青臭いメッセージソング「理由を聞かせて」がはまるのは彼女ならでは。いつまにやら小説家・脚本家・コメンテーターという立ち位置に行ってしまった彼女らしいといえば彼女らしい。
マイナー系の「突然すぎて」「ままならぬ想い」あたりが、彼女の一番の持ち味。このあともう1枚アルバムを出して歌手は廃業、もうちょっと歌を続けてもよかったよね。