中島みゆき 「I love you,答えてくれ」

I Love You,答えてくれ

I Love You,答えてくれ

 「ボロクソに云ってもいいので今の中島みゆきに関するテキストを書いてください」という意見をいただいた。ま、まるでわたしが中島みゆきのファンじゃないみたいじゃないか。――というわけで、現在最新盤のこのアルバムを紹介。07年発売。35枚目のオリジナルアルバム。
 一聴「中島みゆきにちんこが生えていても、俺はべつに驚かないぞ」思わず叫んでしまった。それほどに男気のある、非常に骨っぽいアルバム。愛の荒野をひとり雄雄しく歩みつづける旅人・中島みゆきのたどりついたひとつの境地がここにある。
 ストレートで、愛のしたたる、力強い言葉たちが、次々と彼女から放射され、そのたびわたしの心を射抜く。身のうちに眠る欺瞞を弱さを抉る。
 わたしは、歌いたいんだ、伝えたいんだ、愛したいんだ、与えたいんだ。他に何もありゃしない。なにも見返りなんていらない、受け取ってくれればそれでいいんだ。ただそれだけなんだ。すべての歌が、そういっていた。ここにある、シンプルな言葉、シンプルな愛、しかしそれはなんて困難なものなのだうか。それほどに人は臆病で弱い。
 今、彼女はとても強い。それは、借り物の頑強な鎧で護った強さではない。数限りない闘いの末に身についたはがねの霊肉の強さである。無防備ともいえるほどに自らを晒しつづけた末に身につけた本物の強さである。だから彼女は強くもあり、一方で途方もなくやさしく、暖かい。
 彼女は偽りのない本当の心で歌っている。だからこちらも本当の心で答えるしかない。「I love you,答えてくれ」と絶唱する彼女に、聞き手であるわたしは覚悟を決めてうなづく。
 矢つき、刀折れても、彼女はそれでもとめどなく愛しつづけるだろう。みゆき、お前ってのはつくづく馬鹿な奴だね。でもそんなお前が俺は大好きだよ。
 名盤。必聴。