谷山浩子「うたのえほん」

うたのえほん [DVD]

うたのえほん [DVD]

 今年の秋の新譜は変化球でDVD。タイトルにある通り、コンセプトは動く歌の絵本。コンサートの映像作品化は何度かあったけれども、こういった類の映像作品は谷山さんでははじめて。多分これは、彼女が最近お気に入りの動画サイト「ニコニコ動画」をまわっていて、思いついた企画なんじゃないかな?
 NHKみんなのうた」提供曲を中心に自身の作品がよく取り上げられること、またそこにあげられるいい意味でのアマチュアリズムに満ちたユニークな作品たちに、こういうのを自分の作品でやってみたいと思ってもおかしくない。今回「ニコニコ動画」からボーナストラックとして収められた「まっくら森の歌」のアンサーソング?パロディーソング?の「なっとく森のうた」も、その流れでの収録なんじゃないかな(――それにしても、こういう、自分が面白いと思ったものなら色眼鏡なくなんでも楽しんで、吸収しようとする貪欲さ、というのは案外凄い。彼女の作品の鮮度の高さっていうのはここに秘訣があるんじゃないかな、というのは閑話休題)。
 実際の映像も、資金を大量にかけて先端技術の粋を凝らした豪華絢爛なCGというものでなく、お手軽でいい意味でチープさが漂いつつハイセンスなのだ。趣味のいい才人が、一人でパソコンの前に向かって一日で作りあげた雰囲気というか、デジタル技術を前提にしながら工房的なアナログ感覚がある。かくかく感と可愛らしく動く映像はまさに動くえほんだ。
 ますむらひろしとのコラボも愉しげな「素晴らしき紅マグロの世界」をはじめ、薔薇人となった「キャンディーヌ」(――中井英夫を思い出した)の不気味さ、何気ない東京の夜景がサイケに変貌する「ドッペル玄関」と、絵本といいながらそこにあるのは大人の喜ぶ健全で御しやすい「よい子」の絵本の世界でなく、本当の子供が夢見る極彩色の悪夢が並んでいる。
 ほか、NHKみんなのうた」の映像の収録となった「しっぽのきもち」「まっくら森の歌」「恋するニワトリ」もなつかしい(――「おはようクレヨン」と「そっくりハウス」が未収録なのは権利関係でダメだったのかな?)。また、昔の8ミリフィルムの映像のようにカタカタと動く「ありふれた恋の歌」は、遠い過去に置き忘れた何を思い出させるような切なさが漂っていい。逞しく生きるホッキョクグマを歌いながら、生きとし生けるもの全ての切なる賛歌と響く新曲「NANUK」は傑作だ。



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以上で解決するかと思われます。それでも不可能である場合ご一報ください。