高岡早紀 ゴールデン☆ベスト

ゴールデン☆ベスト 高岡早紀

ゴールデン☆ベスト 高岡早紀

 
 待ちかねたぞ、武蔵。
 ――というわけでついに来た。高岡早紀のシングル・カップリング全曲収録のベストアルバム。
 今までアルバム未収録のカップリング曲にアニメのサウンドトラックのみの収録だった「悲劇のアイドル」もプラス。わかりやすいコンパクトなベストアルバムだけれども、オリジナルアルバムにこぼれた楽曲はこの一枚で全て補完できるつくりになっている。編集者、わかってるね! 加藤和彦マニアも必携だずぇっっ。
 ぽっと出のアイドルに異様にハードルの高い豪華楽曲を与えてしまう八〇年アイドルプロデュースの無茶振り王、ボンド企画・高杉敬二。それは、本田美奈子や少女隊のような歌手としての自意識とプライドの強いアイドルにとっては、可哀想な結果になってしまうのだけれども(――目指しているものになんとか追いつこうと悲壮感が漂ってきてね、結果アイドルらしい溌剌さや可愛らしさがなくなっちゃうのだ)、一方「歌手を目指すつもりはさらさらないわ」という高岡早紀にあってはベタはまりしてしまうのだから面白い。
 加藤和彦の作り出す典雅なヨーロピアサウンドを無意識過剰で淡々と受け流す彼女の佇まいには人形愛的な妖しさすら漂っている。このあたり中期のWinkの世界観にも近い。擬似恋愛の対象ではなく、人形をガラスケースのなかに飾って眺めるような、そういう形でのアイドルポップスといってもいい。
 実質サウンド・プロデューサーの加藤和彦をはじめ、森雪之丞清水信之安井かずみ千住明も、みんななにがあったのか120%の仕事をしているのに、当の高岡自身は小憎らしいほどにしれっと涼しげなんだもんなぁ。
 高岡早紀は四枚のアルバム全て傑作なので、このアルバムを買ったあとはオリジナルアルバムを探しましょう。大丈夫、ブックオフとかで結構見つかるから。