IMALU「Mashed Potato」

Mashed potato(初回限定盤)

Mashed potato(初回限定盤)

 明石家さんま大竹しのぶの娘、いまるのデビューシングル。10年1月発売。作詞がいまる自身で、パパは仕事に夢中で全然会えないし、ママもいつも外出でいつも孤独なわたしは街でうんぬん、でもあなただけとはわかりあえるとかなんとか、という、いわゆる90年代後半――援交って言葉が流行語になった頃ね、の自意識系リリックを、木村カエラとかジュディマリYUKIちゃんラインおしゃれロックに仕立てあげました、みたいな一品。
 自意識路線はちょっと古いんじゃないかなーって思うけれども、有名人の両親を持つ彼女のリアルから滲み出たものなのか、あるいは周囲のでっちあげた下世話なフックなのか。全体的に悪くないし、ボーカルもそんな下手ではないけれども、つるっと流れてしまう。「いい子」に小さくまとまっていて、悪い意味でウェルメイドになってしまっているのだ。体裁は整えてあるが買い手が数多ある楽曲の中からただ一曲「コレ」と選ぶ必然のない曲、面白味がない。もっとむちゃくちゃで破綻してもいいから、腹くくって自分をさらけ出さなきゃ。
 さんまちゃんもしのぶちゃんも、舞台の上で「輝く」ためならどんなことでもやってしまう完全に壊れたプロの芸人(――ゆえに私は大好きだ)なんだから、実の娘がそれを踏襲しないでどうするっていうね。
 両親への反抗心から、泥臭いことをせずに「モデル」だったり「女優」だったり「歌手」だったりをスマートにこなす、いわゆるアイドル的な《時代のアイコン》のポジションを目指しているのかもしらんけれども、仕上がったものは全て親の七光りを駆使した「ごっこ遊び」にしか過ぎないわけで。もう素直に頑張ってほしいというしかない。小手先でどうというより心根から変えねばいいものは作れない状態だよ、これは。
 現段階において彼女の音楽は、良くはできてるが「親離れできない二世タレントの甘え」を表現した過ぎない。だから売れなくて当然だ。