渡辺美奈代 「恋してると、いいね 〜The heart of love〜」

 89年作品。あー、もう、しょうがないなあ。
 10代の童貞のような純情をいまだ引きずったくたびれた四十がらみのおっさんが、目の前の美少女をおかずに、遠い昔の叶わなかった初恋を生々しく脳内リプレイしちゃってる、みたいな、そんな作品。
 そんな可哀想でちょっと羨ましいおっさんは、ムーンライダース鈴木慶一渚十吾ことソニーのディレクター黒田日出良のおふたり。
 前作「My Boy 〜歌え太陽〜」に引き続いてのプロデュースで60年代のなつかしポップスを再現した作品だけれども、やりたい放題度ではこちらの方が勝ちかと。
 「おにゃん子の渡辺美奈代」を求めるファンはもちろん、美奈代本人にとってもおよそ無意味な音楽によるお医者さんごっこ、とはいえやってるおっさんたちが楽しいそうなのだから仕方ない。
 個人的には作り手の作為が見えない分、秋元康時代の諸作よりずっと好きかも。おっさんはいつの時代だってエロくて純情なのだ。