アン・ルイス 「REBIRTH」

REBIRTH Self-cover Best

REBIRTH Self-cover Best

 パニック症候群を発症してロスで隠居状態のアン・ルイスの05年に発売されたセルフカバーベスト。発売元はソニー。過去のヒット曲のセルフカバーと新曲ちょっと、という構成。
 セルフカバーの音源の約半数は前年にリリースされた「me-mySELF-ann-i“refreshed」(コロムビア)に収録のもの。前年とほぼ同じコンセプトのアルバムをレコード会社を変えてリリースするあたり、色々な事情がそこにはあるのだろうが(――その前年にはこれまた違うレコード会社でオリジナルアルバム出してたりするわけだしね――)、とはいえ音自体はとてもいい雰囲気。
 いわゆる「ザ・歌謡ロック」のアン・ルイスの「歌謡」を取っ払った、という感じ。日本産の「歌謡ロック」をロスの水に洗い直した、といってもいいかな。脂っ気が抜けてシンプルなオールドロケンロールに仕上がっている。地元の仲のいいミュージシャンともりあがって、ちょっと作っちゃいました的な気軽さがいい。
 「実はあたしちょっと前は日本でそこそこ知られたシンガーだったのよ」
 「へぇ、どんな曲、歌ってたの?」
 みたいなね。
 若い時は手のつけられなかった大型の猫科の獣が、今はほどよく年を重ねて身も心も丸くなって――でも時にはくわっと牙をむき出したりもするよ、という、今の彼女のありようも自然と伝わってくる。いい老後を味わっているんだな、と。
 とはいえ、一番彼女のありようがわかるのは、おまけの新曲のパートだったりするわけで。オリジナルもっと聞きたいなというのが正直な所。日本で積極的なプロモーションが出来ないから、こういう形なんだろうけれども。ちょっと勿体無い。