田原俊彦 「職業=田原俊彦」

職業=田原俊彦

職業=田原俊彦

 30周年を記念して出版されたトシちゃんの自伝。いわゆるタレント本なんだけれども、結構率直に色々と語っているのが好印象。
 ジャニーズ事務所社長・ジャニー喜多川氏のことをはじめ、独立の決意など、触れづらいこともしっかりと語っているし、タレントとしてのナルシシズムやら、自らのこれまでキャリアなどなど、結構、自らを客観視している(――88年の「教師びんびん物語」での再ブレイク前のプチ低迷時代なんかもちゃんと触れてるしね)。独立後、活動に見えない圧力を感じるようになったこと、しかしそれ以上に自らが解放された喜びが勝ったこと、なんかも書いてる。
 早くに父を亡くし、極貧の母子家庭で兄弟とは離れ離れに。十五歳、人生の一発逆転を目指してのタレント志願。「田原俊彦・1000日計画」なるものを掲げ、高校卒業するまでにデビューすることを自らの目標とし、高校一年の夏に単身上京しアポ無しでジャニーズ事務所に直撃。運よく研究生になるものの、時代は「ジャニーズ・冬の時代」、本当にデビューできるのだろうかと不安を抱えながらの三年。それが一転「金八先生」で脚光を浴び――。というトシちゃんがデビューするまでの件は、結構熱い。
 デビューして売れっ子になって、一番最初にしたのが父の墓を立てたこと、ってあたり、デビュー時点で完全に腹を括ってたんだな、トシちゃん。アホな子っぽいアハハ笑いのトシちゃんがある程度計算によるものだったことは薄々気づいてはいたけれども。
 ジュリーのレコードひっそり買って友達に見られないように自宅で歌真似していた甲府の貧しい少年が、覚悟を決め、自らを磨き、いろんなものを捨て、運命の導きを掴んで、そしてスターになったのだな、と。結構泣けます。
 ゆるい文体で所々おマヌケなエピソードなんかも織り交ぜちゃったりしてますがそれも含めてトシチャン。彼のことをよりよく知りたいならマストバイな一冊。