小柳ゆき「KOYANAGI the Disco」

KOYANAGI the DISCO

KOYANAGI the DISCO

 打倒・宇多田ヒカル、バーニングの放つ新時代の歌姫、だったはず……な小柳ゆきが、03年にひっそりと出した洋楽カバーアルバム。前半七曲がドナ・サマー、後半五曲がスタイリスティックスのカバー。
 そもそも小柳ゆきサウンドコンセプトがこのあたりの70年代ディスコサウンドなのだろう、危なげない出来ではあるのだが、どこか空疎な印象もまた漂う。
 ざっくりいえば「これならドナ・サマーのベスト盤買うかな」と。ゼロ年代前半、確かにディスコ回帰のムーブメントはあったけれども、そのまんまを再現されてもなー。上手いけれども、上手いだけで、そこから先のサムシングがない。結果、ただただ古臭く響いてしまう。
 物真似タレントの清水ミチコ・コロッケが芸能界で生き残り、その後現われた、その他多くの物真似タレントが、なんだかんだいって次第に消えていったのか。その違いは、芸に悪ふざけという名の「批評性」があるかないかだと、私は感じる。
 小柳ゆきに足りないのも、そこ。多分、彼女って、本質的に真面目な性格なんじゃないかなー。つねにしっかり歌い倒しちゃってさ。既存の枠からもっとはみ出して、いいんだよ。芸って、そういうもんなんだから。お上手なものが見たいのではなく、その人だけができるものが見たいのだ。
 もちろんそれは彼女だけの責任というわけもあろうはずもなく、そこにプロデューサーの老いのようなものも漂うのが、ちとせつない。
 のるたる爺の回春剤以上のものとなれなかったのが、つくづく惜しい素材である。